茹で蛙の盆踊り

茹で蛙の盆踊り

アラフォーサラリーマンが、まぬけな子育て話などをお届けします

カラス襲来。そして変な気遣い

これまでゴミ捨て場の管理ってものをしたことがなかった。ドラマなんかで、地区のうるさいおばさんなんかがゴミの分別に関してうるさく言うシーンがあるけど、自分はそう言うのをやったことが全くなかった。

これまでは運良く全てそう言うのは管理会社がやってくれていたし、この前まで住んでいたところはそもそも頑丈な、そしてでかいゴミ箱にゴミを捨てればよかったから、ゴミ出し場の管理をすることとは無縁だった。

もっと遡って思い出すと、実家はかなり田舎だったから、僕がまだ小さい頃なんてまだ普通に家の庭でゴミを燃やしていた。今は流石に庭でゴミなんて焼いたら消防が駆けつけてくるからそんなことはできないけど。昔はおおらかだったから、みんな有害なものでもお構いなしで燃やしていた。だから、僕が保育園くらいの時はまだうちの地域にはゴミの回収なんて来てなかったような気がする。

そんなこともあって、ゴミ捨て場の管理ってことに実感が湧かなかった。田舎もんだから「カラスってゴミ荒らすんだー」って完全に他人事。

そんな僕も引っ越してとうとうゴミ当番というものをやることになった。なんとアラフォーになって人生初のゴミ当番だ。一体何をするのか、どんな責務なのか、この当番をしくじったらどんな責め苦に遭うのか未知数だ。

まずは周りの人に聞き取り調査をして当番の仕事を把握する。どうやら資源回収の日に特殊な回収袋を倉庫から持ってきてゴミ捨て場に設置しなければいかんらしい。なるほど、ペットボトルを捨てる網の袋はいつも当番さんが出してくれていたのか。あとは、ゴミステーションの保全。週一くらいでゴミ出し場の掃除をしないといけないらしい。うん、これは重要な仕事だ。そしてこれが一番厄介だけど、不法投棄や間違えてゴミを出した人がいたら、そのゴミを当番が一時的に預からないと行けないらしい。え?!ゴミを引き取るのかよ…って正直思った。もう、ちょっとくらい多めに見て回収してよ…って正直思うけど、ここは分別の国、日本だからそんな温いことは許されんのでしょう。燃えるゴミの中に金属片でも入っていた日にゃ切腹もんですよ。

ゴミ当番の役目は把握した。まずは資源回収の日がやってきた。これはオッケー。僕もそつなくこなしました。みんながゴミを出す前に回収袋を出さねばと5時前に回収袋を出しに行ったのに、すでにゴミステーションの半分くらいが段ボールと発泡スチロールで埋め尽くされていたのには驚かされれました。前日に引っ越しした人がいたから、彼のゴミだね、きっと。オッケー。そう言うこともある。しかし、大丈夫、彼が捨てたゴミは回収袋を必要としないものばかりだから、僕はまだ間に合っている。この回収袋を必要とするこのアパート住民のために責務を果たさねば。回収の袋を設置して終了。30も後半の人間にとってはこんな作業は簡単なもんですよ。袋の片付けは妻にお願いして、この日の我が家のお仕事は完了。何事もなく終わりました。

週が明けて月曜日。今日は燃えるゴミの回収日。燃えるゴミの日は特に何か設置することはなかったなと、自分ちのゴミだけ持ってゴミ捨て場に行って、目の前に広がる光景に唖然。何やこれ!?なんかゴミ袋からいろんなものがぶちまけられとるやん!!あのピンクのゴミ袋を摘んで捩じ切ったような痕跡。目的もなくただひたすらに中身を書き出した様子。現場の状況からして計画的な犯行ではない。これは奴らの仕業に違いない。都会によく出ては悪さをすると言うあの黒い鳥類。日本代表のユニホームにもあしらわれているが、多分脚が2本しか生えてないバージョンの彼らは日本でもっとも忌み嫌われている鳥だ。どこぞの神話では罰として体が黒くなったともされている。あの漆黒の生物、そうカラスの仕業に違いない。

前述の通り、田舎育ちの僕にはカラスとかゴミ捨て場とか、その組み合わせのカラスがゴミを荒らすってのは全くの無縁だった。30年以上もカラスゴミ処女を固く守ってきたわけです。そんなうぶな僕にはとってはもうショックな出来事ですよ。あんなにも露骨にひとんちの生活ゴミを見たことなんてないですからね。数秒くらいショックで体がフリーズしてしまいましたが、そのあとすぐに思い出しました。そう、自分にはゴミ当番という重大な責務があることを。日本国民の四大義務にそのうち入れられるであろう、ゴミ当番という重要で崇高な義務を果たさねば。

さて、ここで問題だ。宇宙が誕生した時なみにカオスなこのゴミを一体どうやって片付けるのか。引っ越してきたばかりの我が家にこのゴミに正面から立ち向かえるような都合のよい装備などない。かと言って、他人様の排出なさった家庭ゴミを素手で触るにはちょっと自分にはハードルが高すぎる。その域に達するにはまだ自分には修行が足りない。考えろ自分。近所の人たちはすでに活動をし始めている。30を過ぎた男がゴミを素手で掴んでいたら、何も悪いことはしていないどころか良いことをしているにもかかわらず完全に不審者だ。下手したら今横を通り過ぎている女子高生に通報されて、そのまま警察にしょっぴかれ、何故か痴漢の冤罪までセットで頂戴することになるかもしれん。それだけは避けたい!どうすれば穏便にゴミ掃除ができるか… 僕が出した答えは、「ゴミ袋を手にはめて手袋代わりにする」。これだけだと、「ゴミ袋を手にはめてゴミ漁ってるおっさん」と思われなくもないか、ゴミを拾い集めながらちゃんと「もー、カラスったら!ほんと勘弁してほしいわ!!片付けるのめっちゃ大変やん!」という雰囲気を背中からめっちゃ出すようにした。果たしてそれが功を奏したかどうかはわからないけど、取り敢えず通報はされなかった。

片づけをしている最中ふとこんなことを考えた。「アパートのみんなのためにこんなに頑張ってやっているのに誰にも気づかれないのもちょとさびしいな」と。なんともあさましい考えだけど、自分がしている善行を誰かに認められたいと思ってしまうのは人の性というもの。しゃーないもんだ。しかし、この考えが浮かんだすぐあとに、また違う考えが頭をよぎった。

いや待てよ、この状態で誰アパートの人が通って僕に気を遣って「○○さん、ありがとうございます。私も手伝いますね」なんて言われた日にはどうする?僕の性格上、「ありがたいけど、それはマジでやめてください!!」って思うよなあ。「そんな、あなた様の手を汚すのは申し訳ねえ!!」ってなる。

で、もし自分がゴミ当番じゃなくて、誰かがゴミを片づけている最中にそこを横切ってしまったらどう思うか?その場合今度は「我々の出したごみを片づけさせてしまって申し訳ない!!」ってものすごくすまない感じになる。

日本人の特性なのか、単に僕が気にし過ぎの性格なのかどう転んでも「申し訳ない!」ってなってしまう。一番いいのは「誰も俺に気づく前にさっさと現場を片づける!」是に尽きる。そうとなればできるだけ早く証拠 (?) を消してしまうしかない。善とゴミ掃除は急げだ。

アパートの住人が通る前にやらねば!と急いでゴミを片づけていると、僕の後ろを「おはようございまーす」と言って何というわけもなくアパートの人がさーっと通りすぎていった。

なんだよ、そういう接し方でいいかよぉ!僕の無駄な悩みは一体何だったんだよ!!っと自分自身に激しく突っ込みをいれました。昔からそう。小さいころからそう。自分は人の100倍くらい悩んだり考えたりしてしまうけど、引っかかるようなことで悩んだりしないんですよね、もう30も超えたしそんなこたぁわかってますよ… まだまだ修行が足りんです。あと100回くらいゴミ捨て場の掃除をして精神を鍛えないといかんですな。