茹で蛙の盆踊り

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アラフォーサラリーマンが、まぬけな子育て話などをお届けします

二人の距離感

昔から「距離感をとる」とうことが苦手だ。こればっかりはいくら年を重ねてもうまくできない。やっぱりもともとの素質がないんだなあ。

難しい距離感、それは友達以上、恋人未満の女性との距離感。これなんかは全くかわらない。いつまでも苗字で読んでいたら他人行儀だし、相手に自分がその気がないと思われてしまうかもしれない。かといって、いきなり下の名前で呼び始めるというのも、なんかいきなり恋人気取りかよと思われるかもしれない。手をつなぐくらいはオッケー??いや、これはもう恋人になってからじゃないとあかんやつか?さすがにキスまでいくともう恋人だろう。この辺の心理のグラデーションってのは個人差があるから難しい。個人的には、きれいな人に微笑まれたらその時点で恋人レベルに昇格ですよ、男ってのは単純ですから。友達なのか、恋人なのか、お互いに探りを入れているあたりが一番楽しいのかもしれないね。僕の場合はもう妻子もいるわけで、とうに友達か恋人かではなくて、妻かお母さんかという境目に来ているのかもしれんね。まあ、僕としては妻は妻であって「お母さん」って呼ぶことにはかなり抵抗があるけど。

難しい距離感、それは新しい車。この前新しい車を買ったけど、ちょこっとサイズがかわるだけでも、前後左右の感覚がつかみにくい。もともと運転が下手だから、ブロックにミラーをこすらないか、お隣さんの車をぼこぼこにしてしまわないか、はたまた元気に走っている近所の小学生を新鮮な挽肉としてしまわないだろうかと戦々恐々としている。「新しい車」って見栄を張って書いてみたけど、実は車両価格40万くらいの格安車。会社で上司にこのことを話したら「お前多少は金もらってるんだからもっといいやつ買えよ!」って言われました。それはそうだけど、平日は乗る機会があまりないし、ただの移動手段としてしか考えていないからそんなに金をかけるわけにはいかないなあ。あと、数カ月前まで超絶広々とした土地に暮らしていた身としては、今住んでいる街があまりに狭すぎていつ事故を起こしてしまうかわからない。「事故っても我慢できる価格」ってことになると50万くらいが限度だった。

難しい距離感、それは親子夫婦の関係。妻がめちゃくちゃキツめに息子を叱っているとき、父親である僕は一体どれくらいの距離感で、どのくらいの温度で息子に接すればいいのかいまだによくわからん。妻と同じく自分も激しく息子を叱りつけた方がよい?でも、これだと息子の逃げ道がなくなってしまってちょっとかわいそう。じゃあ、僕が息子と妻の間に入って仲介役を引き受けるか?これは結構リスキーだぞ。場合によっちゃ僕が妻に怒られて自体を悪化させることになるかもしれん。危険すぎるからできれば避けたい。それでは、どうすればいいか??もう、困った顔をして真剣そうなふりを決め込むしかない…

難しい距離感、それは会社帰りに同僚と同じ帰り道になってしまったときの距離感。別に、同僚との仲がいいとか悪いとかは関係ないんですよ。僕みたいな気にしがちな人間にはこういうのがちょっとしたストレス。今日は日が暮れてから会社をでて、音楽を聴きながらちょっと速足で駅に向かっていたら、自分の目の前に同僚二人が歩いていた。日も沈んであたりが暗くなっていたらか、結構近づきまで気が付かなかった。

さて、ここでどうするか。それなりに仲の良い人たちだし、帰る方向もいっしょだから「おつかれさまでーす」とだけいって抜き去ってしまうのもなんかちょっと薄情な気がする。じゃあ、一緒に駅まで行くのか?駅まで行くのはいいんだけど、その後はどうするよ?僕は常磐線快速に乗る予定だけど、彼らはたぶん各駅に乗るんじゃないかな。僕も別に各駅に乗れなくはないってのが心を揺さぶってくれる。僕みたいなしょーもないことを考えてしまう人間は、自分だけ違う電車に乗ったらちょっと薄情って思われないかなって考えなくてもいいことを考えてしまう。この思考法でいままでいったいどれだけ損してきたことか。

彼らを発見してほんの一瞬でどうでもいいことが頭の中を駆け巡る。さすが妄想の亡者!仕事は遅いけど、こういう思考だけは人一倍速い。さあどうする、自分、どうするよ…?

Answer: 携帯に連絡が入ったふりをして一旦立ち止まり時間稼ぎをして彼らとの距離をとる!!

きっとこれがベストアンサーに違いない。これなら誰も (誰もってか僕が) 傷つくとこはなく世界は平和に保たれるはず。SDGs 的にもたぶんこれが正解でしょう。持続可能な人間関係を保つにはこれしかない。と思い、ポケットから携帯を取り出し、何の連絡も入っていない LINE をチェックしてしばし足を止めた。十分距離を取っただろうを思い、歩き始めたら、すぐ先に彼らがいる。歩くの遅ッ!!!二人とも学生相撲に出られるくらいには恰幅がよろしいので、きっとその肉の鎧が重いのでございましょう。なんとも歩くのが遅い。こちらの気遣い (??) なんて一切お構いなしでのっそのっそと歩いていらっしゃる。兄さんたち、牛歩は国会だけでいいってばよ… このまま突き進んでは彼らに追いついてしまう。しかたないから、また「携帯に連絡が入ったフリ作戦」を実行するしかない。近くのお堂に身を寄せて、さっきよりも長めに時間をとり、これで十分距離が取れたと思い、歩き始めた。

で、やっぱり遅いな彼ら!!! あんなに待ったのにすぐに追いつけてしまう。彼らに追いつかないように、振り上げた足をほぼそのまま垂直に地面に降ろし、ひたすら「歩いている風」にして僕もゆっくりゆっくり進むことにした。目の前に信号があって、ちょうど彼らが渡り切った後に赤になってくれた。よし!これで距離が稼げる!普通信号待ちだと損した気分になるけど、今日はラッキーだと思った(笑)。

しかも、信号の先は道が分かれているから、僕は遠回りする道を選んだ。これでもう大丈夫だろうと軽快に進んでいった。これはちょっと油断したな。信号で待って、しかも遠回りまでした。普通これでもう追いつくはずはない。平均的な人類の歩行速度ではそうなるはずだった… しかし、駅の入り口前で鉢合わせそうになる。なんでや!?いったいどんな緩慢な歩みでここまで来たのよ!僕は駅の寸前で踵を返して違う改札口に向かったのでした。東京は田舎と違って改札口がいっぱいあるからいいね。